■実話ときどき法螺

60代主婦の、実話だけではおもんないし

夏は嫌い。
夏を嫌うあまり春さえ楽しめない。(だって春の背後に夏が見え隠れするから)
と、こういうことを30年来言い続けてきた。(もっとかな?、もっとだ。大学生のころすでに夏が嫌いだ、そのせいで春も落ち着いて春を楽しめないと大騒ぎしていた、ということを今はっきりと思い出した。ってことは40年来というか、ほぼ50年来ということか)
50年来、夏が嫌いだ夏が嫌いだとわめいてきたが、あれ?それほどでもなくなってるかもしれない。
67歳になってしまった私は、もう義務でどこかへ日参しなくちゃならないこともなくなったし、化粧が汗で崩れて、その不快さに気力さえ萎えてしまう夏の午後のやるせなさに身をさいなまれるということももうあまりない。
そうか、もうそんなに夏は嫌じゃないかも。
67歳の、初夏にそんな気付きを得たことをここに記す。

ゴミのような人生だったとは思わないけど。

書きかけの小説みたいな雑文がいっぱいあって、これもまた終活の観点から整理していかなきゃなぁ、なんてことをときどき思い立っては落ち着かない気分になり、だけど終活の優先順位から言えば、もっと先に整理、処分すべきものはたくさんあるので、実際には何も動き出すこともないまま時間だけが過ぎる。
いつか私が死んじゃったら、誰に迷惑をかけるでもないパソコン内のゴミとしていずれこの世から自然消滅してくれるのだろうとは思う。
ゴミのような私の書きかけの小説群をときどき読み返す。
結構面白かったりする。
へえ、こんなの書いてたっけ?と驚くこともある。
で、その続きを書いてみようとして、気づく。
そっか、続きが書けなくってゴミになってたんだ。
スタートダッシュはいいけど持久力が無い。
これって私の人生全部を通して、私の人生の質を決定づけるような本質的な欠点なのだ。
書きかけの小説のゴミの山を前にして、なるほどね、と深く納得する。
もうこの歳になると、自分の本質に気づいて悲しくなるということはない。
66年の人生で何度も何度も経験してガッカリを繰り返してきたからね。

もう残り時間が少なくなって、起死回生もありそうもなく、自分の能力の低さを再自覚して、ただ納得するのだ。

なるほど。

私にふさわしい人生の結果を今、見ている。

フェリー

神戸ー高松間を就航する船便の中にジャンボフェリーというのがある。
片道2000円弱で、ネット割だと100円安くなる。土日と深夜便はちょっとだけ割増料金にもなるが、それでも安い。
海辺のカフカ」の中でカフカ少年が神戸から高松に向かうのに高速バスを利用していたが、なんでジャンボフェリーを使わないかなぁと、私はかなりそこに不満があったのを今も思い出すたびに不満がぶり返す。
カフカ少年にはジャンボフェリーに乗ってほしかった。
フェリー乗り場のうら寂しい雰囲気とか村上春樹の筆で表現してほしかったなぁ。
とはいえ、神戸のフェリーターミナルはその後きれいに建て替えられ、今はさほどうら寂しさはなく、早朝や深夜便を利用するときに仮眠するにも快適だし、着替えや化粧をするにしても使いやすい設備が揃っている。今のフェリー乗り場はあまり情緒的にはそんなに魅力的ではないかもしれないが。
私がフェリーを推すのには理由があり、一時期非常に懇ろだったのだ。
毎週フェリーに乗っていた。
高松の港から神戸へ向かうのだ。
思春期特有の神経症的な困難な症状を抱えていた娘が神戸の大学に進学し、案の定、入学直後から精神的に不安定で、私は心配で毎週娘のアパートへ通うことになった。
毎週なのでなるべく安く行かねばならない。
私立の女子大は学費も安くなかったし、娘がかかる精神科医から勧められた診療は保険適用外のもので、1時間のカウンセリング代が20000円もしたし、夫の営む家業は時代の趨勢と逆行するような業界で緩やかに衰退するのみの気配により、将来の見通しはうすらぼんやりとした、決して明るくはないものだったから。
だから毎週JR(予讃線特急+新幹線)など使ってられなかった。
フェリーなら往復でも4000円以内で済んだ。JR使ったらその3倍か4倍になる。
真夜中に出かけ真夜中に帰ってきた。
真夜中に乗船し、早朝に神戸に着き、いくつか私鉄を乗り継いで娘の住む町まで、家を出てから7時間くらいかかる。真夜中のフェリーでなんとか眠ろうとしても三等室の硬い床に横たわった耳に船のエンジン音が障って眠れず、それだけではなくあのころはあらゆる種類の不安にさいなまれた精神状態が眠りを妨げていたのだろうが、とにかくつらい道中の記憶だけが残っている。
辛い記憶にもかかわらずフェリーには助けてもらった、その恩義ゆえに私はカフカ少年にはジャンボフェリーに乗ってほしかった。
ジャンボフェリーの世界デビューの機会だったのに。なんで、村上春樹はジャンボフェリーを選ばなかったのか、返す返すも残念に思う。

さて、件の小難しい症状を抱えた娘に翻弄された時代も今では古い記憶になった。
こういう振り返りをするとつくづく長く生きてきたんだなぁと思ってしまう。
人生の中で起こる良いことも悪いことも、山も谷も過ごしてきたという感慨に改めて耽るのであるが、今はそういう感慨を述べるのとは違う趣旨での語りなので先に進む。
そうそうジャンボフェリーの話。
娘が神戸にいなくなればジャンボフェリーとも疎遠になった。
加えて、私の住む町からも関西方面への高速バスの新たな便ができてからはもうすっかりフェリーとは縁遠くなってしまったのだった。
その間にうら寂しかったフェリー乗り場が高松も神戸もすっかり新しく明るく建て替えられていたってわけ。

「フェリー2」へつづく

フェリー2

娘を案じて真夜中のフェリーで神戸へ通っていたのはもう20年ほども前の話になる。
5年ほど前、久しぶりにふと思いついてフェリーに乗ってみたら案外楽しかったのだ。
関西方面の友人と飲んで、そのまま深夜のフェリーで帰るというスケジュールで出かけてみたらこれが案外快適だった。
飲んだらそのあとはホテルに泊まるしかないと思い込んでいたが、前日は京都で母孝行にあて、翌日前半はショッピング、夕方から梅田や三宮で友人と飲み、フェリーで帰れば、週末の2日間がまるまる活用できるし、飲んだ後のフェリーでは熟睡できるし、いいことずくめじゃん!ってことに気付いたのだった。


つい最近もフェリーを使って娘と二人で遊んできた。
土曜日深夜のフェリーに乗って早朝に神戸につき、少し仮眠を取った後フェリーターミナルビルの中で洗顔やヘアメイク、着替えもゆったり済ませ、いざ、神戸の街へ。
三宮のこじゃれたベーカリーカフェで朝食。
阪急で西宮へ向かい、そこでマチネ観劇(キョンキョン主演の「阿修羅のごとく」)。
終演後西宮ガーデンズでショッピングして三宮へ。4時から開いてる居酒屋に入って二人でカンパーイ!(なんとこの日は娘の誕生日でもあったから祝杯だ)

14歳から30歳まで小難しい神経症状に苦しみ、青春時代の楽しい思い出もなく過ぎた娘は今40歳の青春を楽しんでいるらしい。

ときどき母孝行のつもりかこうして小さな旅に付き合ってもくれる。
居酒屋でそんな母と娘のおしゃべりは尽きない。
ビールも進んだ。
結構飲んで食べていい気分で店を出たら、まだ時刻は7時過ぎで、「7時20分のフェリー間に合うじゃん」
深夜便より一本早いフェリーに乗って爆睡の間に高松港に着きました。

これ、使えるね!
また、こんな風に親子飲み会しようね!

恋人とのデートもお忙しいでしょうがよろしくお願いします。

買い物ブギ

今日は少し遠いところにあるスーパーまで足を伸ばす。
なぜなら、キャベツひと玉85円に惹かれて。
85円は魅力よね。でも1人1個まで。(ま、3人家族で欲張って2個買っても腐らせてしまうのがオチ。だけど、1個は絶対欲しい)
そんな心意気で洗濯も早めに終わらせ、鼻息荒く勇んで出かけた。
開店時間前だというのにすでに売り場にお客がなだれ込んでいた。
もしかしたら私が開店時間を間違えてるだけなのかもしれないが。
浮き足立ってしまう。
別の特売品(エリンギ2パックで100円とか白菜ハーフ138円とか)に目を奪われて回り道してる間にキャベツ売り場にたどり着いたときはそこは空っぽだった!
ええええええ!こんな遠くまでキャベツ目当てで来たのにぃ!
しかも開店直後に来ているのにぃ?!
がっかり。だけど、私は案外諦めが早い。
争奪を見越して真っ先にキャベツ売り場に直行すべきだった、それをしなかった自分を深く悔いるとか、あまりしない。
エリンギ2パック100円を見たら目を奪われてしまっても当然だったと自分を肯定する。
娘はこういうとき、立ち直れないくらいの打撃を受けるタイプなんだよね。親子と言っても性格全然違うんだよねぇ。
失敗に際して深く悔いて今後は同じ轍を踏まないぞ、と心に刻んで成長するタイプなんだね、と立ち直れないくらいにいちいち落ち込む娘にはそのように声をかけることにしている。
実際、私は失敗を繰り返してもまったくそこから何も学ばず何度も同じ失敗を繰り返して、明るく生きてきた。
娘は、14才で拒食症になってしまったりしたからな。
だから、何がいいとか悪いとか、わかんないよ。ほんと。

かつおのたたきも良きお手頃価格を見せてくれているじゃないか。
肉売り場には、前日売れ残りの半額シール品がまだまだ残っている。
3980円の半額で和牛ステーキ肉を買い物カートにインしました。わりと大胆な決断だったね。
お腹すいてるからね。
そうそう、今日はこのあと10時半から胃と腸と胸部の集団検診があって、昨夜10時以降は何も食べられなくて、朝食も抜いたままで、現在午前9時半、お腹すいてます。
和牛の、サシの入ったステーキ肉3980円(の半額)!えーい、お買い上げという勢いはそういう背景が後押ししておりました。

お肉売り場でうろついているとき、あれ?と思う。
周辺にいる人たちのカートにキャベツが入っているじゃないか。
明らかに私より後から入店していたと思しき人らもキャベツを手に入れている。
なんでやねん。
売り場の流れを逆流して、野菜売り場にとって返してみると、と、と
特売キャベツ放出の第2弾が行われた模様。
私がその場に戻ったとき、残り5個くらいだった。
素早く1個入手。やったね。

いつも来ている店じゃないので、店の売り方の癖、みたいなものを把握できていなかったんだな。
この店、こういう癖で売るわけね、と心に刻む。

9時45分、ペイペイでお支払いを済ませて店外に出ると、薄日が差して暑い。

9月下旬といってもまだ暑さが残っていて、今日の私の服装は、なんとノースリーブワンピースに麻のカーディガンを羽織ってみたが、暑くてノースリワンピのまま買い物してました。
秋、早く来いよー
今夜はお肉だよー